【絵画の謎解き】ラファエロ前派に見出された画家ボッティチェリの「神々の庭園の永遠の春を表す絵『ラ・プリマヴェーラ』」は、実は「死」がテーマだった?!


Sandro Botticelli [Public domain], via Wikimedia Commons

ルネサンス期のイタリア人画家サンドロ・ボッティチェッリが1482年頃に描いた、フィレンツェのウフィツィ美術館所蔵の絵画。日本ではイタリア語からの訳語である『春』や、『春(プリマヴェーラ)』、『プリマヴェーラ(春)』などとも呼ばれる。
プリマヴェーラ - Wikipedia

サンドロ・ボッティチェリの「春(La Primavera)」(または「春の寓意(Allegoria della Primavera)」)は美術史上最も難解な、謎に満ちた作品のひとつとして知られています。これまで「春」には様々な解釈がなされてきましたが、決定版と言える解釈はまだ存在していません。
ボッティチェリの春 = プリマヴェーラの謎


「春」にしては背景が暗く、ゼピュロスが蒼白で何だか怖い


ゼピュロスが出て来ている部分の樹木の様子や背景にも、なかなかただならぬ不吉な雰囲気が漂っています。・・・(中略)
まるで「墓場=冥界への出入り口」から現われた様子を描かれたように思われます。

ボッティチェリ《春(プリマヴェーラ)》:「死」に関係するふたりの登場人物(上)


画面右上にいる風をおこして、さらにいる西風の神がゼピュロスです。ボッティチェリが描いた「ヴィーナスの誕生」にも実はゼピュロスはいますが、色が違います。あちらは肌色ですが、こちらは青白い。意図的であるように思えますね。


冥界の案内人がいる。


画面左端にいる男性。この神様はその衣装の特徴から、ヘルメスであると言われています。そしてヘルメスは「冥界の案内人(プシュコポンポス)」という役割を持つ神様なのです。

ボッティチェリ《春(プリマヴェーラ)》:「死」に関係するふたりの登場人物(上)

wikiには、マーキュリーとありますが、ギリシア神話においてはヘルメス(オリュンポス十二神の一人)と同一視されます。プシュコポンポスという名は「魂を導く者」を意味する、ヘルメス神の異名です。あらゆる人々に眠りをもたらす、黄金の羊飼いの杖を携えています。絵でいうと雲にその杖を向けていますね。

衣装の特徴といえば、

美術では、つば広帽子をかぶって伝令杖(つえ)を手に、羽根の生えたサンダルを履く軽快な旅人姿で描かれることが多い。
ヘルメス(ヘルメス)とは - コトバンク


実は当時不吉な作品だった?


プリマヴェーラを依頼したジュリアーノ・デ・メディチ(ロレンツォの弟。息子[3男]のほうではない)が、完成直後にパッツィ家の陰謀(当時のフィレンツェの実力者ロレンツォ・デ・メディチを敵対関係にあったパッツィ家の関係者が殺そうとして失敗した事件)により暗殺され、当時この作品は不吉なイメージが付きまとっていたんだとか。(※誰がこの作品を依頼したかどうかは諸説あります。)


ジュリアーノの死とシモネッタの死に関係あり?!


ジュリアーノ・デ・メディチといえばダヴィンチと友人であり「モナ・リザ」を依頼した人物です。ジュリアーノは上で記載したようにパッツィ家の陰謀により25〜26 歳の若さでなくなっていますが、とびきりの愛人がいました。

彼はシモネッタ・ヴェスプッチの愛人であったが、彼女は彼よりも前にわずか22歳で亡くなっていた。
ジュリアーノ・デ・メディチ - Wikipedia


メディチ・サークルのマドンナ的存在で、ボッティチェリの永遠の女性だった。「ヴィナスの誕生」の女神をはじめとして、ボッティチェリの描く女性には、常にシモネッタのイメージが重なる。
LA PRIMAVERA ボッティチェリ「春(プリマヴェーラ)」のキーワード


ヴェスプッチ家を通してボッティチェッリに見いだされ、彼女を描くために多くの画家たちがフィレンツェにやってきた。
シモネッタ・ヴェスプッチ - Wikipedia


肺結核により、この世を去ったシモネッタですが、とっても美人だったようですね。ブロンドの髪、そして整った面長の顔、均整の取れた姿態、シモネッタはフィレンツェの人々からLa Bella(美しき)と呼ばれていたそうです。ちなみにジュリアーノもイケメンでイル・ベッロ(美しき者)と言われていたようです。美男美女。




二人の恋を祝福した詩に影響を受けている?!



「春」は、・・・(中略)・・詩人ポリツィアーノの詩「ラ・ジョストラ」から画想を得たものだと言われています。「ラ・ジョストラ」は、1475年、騎芸競技会(ジョストラ)で優勝したロレンツォの末弟・ジュリアーノの武勇と美しいシモネッタの恋を祝福した作品で、ボッティチェリはこの詩の世界に相当心惹かれていたようです。
mariのページ – 世界の名画をコメント付きで紹介するページです。 美術, 絵画, 画家 » Blog Archive » 「春」


この詩に影響を受けたことは十分考えられる。いや確実に影響を受けている。この詩には、メルクリウス以外、ゼピュロス、フローラ、プリマヴェーラ、アモル(クピド)、ヴィーナス、グラティアが登場する。特に、68節では、ヴィーナスの領地の説明として、まず、そこへ向かうアモル(クピド)の姿を描いて、その領地をグラティア、美の女神、フローラ、ゼピュロスがいるところとしている。
『馬上槍試合』の影響: takayanの雑記帳


当時この絵は「春」ではなく詩より「ヴィーナスの王国」と呼ばれていたそうです。実際に詩人ポリツィアーノが書いた詩「ヴィーナスの王国」から着想して描かれたという説は最も有力だそうな。

やはり2人の死は作品に影響があったのでしょうか。


やはり絵の中に二人がモデルになっている神が存在する


これまで「春」のヘルメスには、「雲を払っている」とか、「三美神の1人と恋に落ちる」とか、様々な解釈がありましたが、み~んな見当違いです。
彼は亡くなったシモネッタの魂を導くために、この絵に呼ばれたのです。

ヘルメスと宝杖(カドケウス) - プリマヴェーラの謎

ヘルメスは亡くなったシモネッタの魂の案内役だったんですね。灰色の雲(暗雲)を追い払い、春の園の平和を守ろうとしている説が通説となっていますが、私も表情や姿勢からみても、無礼なことを申しますが、平和を守るためのお仕事をされているとは思えません。


花のフィレンツェの二つの悲劇を悼んで、ロレンツォが夭折の佳人二人の姿を写させたのが、
『プリマヴェーラ~春~』だという説があるのです。ジュリアーノはメルクリウス、シモネッタは花の女神フローラとして。

www.libresen.com/rosehp/day/day-prima/primabera3.htm

制作年がジュリアーノが亡くなった年以降であれば、たしかに兄ロレンツォ(もしくはボッディチェリ自身)が思いを込めて描いたのかもしれないですね。
フローラの表情、ヘルメスの表情はたしかに他の神よりも引用元のサイト様に記載されているとおり、人間味があるように感じますし、よく見ると肖像画と似ている感じもします。


死から生へ、地上から天上へ


画面の両端にいる男性二人は、ともに死の要素に関係していて、
その二人に挟まれたヴィーナスの園は、オレンジや花々の息吹に満ち溢れた生命の世界です。

www.libresen.com/rosehp/day/day-prima/primabera3.htm

右端が青白い色をしたゼピュロス。左端がヘルメスですね。
上でも記載しましたが、天界と地上と、そして、冥界との間を行き来する伝令神としてヘルメス。青白いゼピュロスは冬から春を届けています。

【絵画の謎解き】ミステリアスすぎる超天才画家、ヒエロニムス・ボスの「快楽の園 」は世界の終わりの警鐘を意味していた?!


Hieronymus Bosch (circa 1450–1516) [Public domain], via Wikimedia Commons

快楽の園について


『快楽の園(かいらくのその)』は、初期フランドル派の画家ヒエロニムス・ボスが描いた三連祭壇画。
快楽の園 - Wikipedia

「快楽の園」は、左翼パネルには、神とともにアダムとイヴが登場する、いわゆる地上の楽園が描かれています。中央パネルは、快楽を知った人間たちが繰り広げる快楽の園が描かれています。そして右パネルには、人間たちが悪魔や怪物、怪獣から、あらゆる拷問、苦痛を受ける地獄のさまが描かれています。
ヒエロニムス・ボスの「快楽の園」 | ムッシューPの美の探究

この絵画はボスが画家としての最盛期にあったときに描かれ、この作品のように複雑な寓意に満ち、生き生きとした表現で描かれているボスの作品は他に存在しない
快楽の園 - Wikipedia


でも「快楽の園」もしくは「悦楽の園」というタイトルで知られるようになったのは、1819年頃から


「快楽の園」というタイトル自体なんか個人的に違和感がありますね。左側パネルの天国の様子、中央パネルの生命の歓喜や快楽はわかりますが、右側の地獄もあるのになぜなのでしょう。

実際に最初は「肉欲」や「イチゴ絵」という名で知られていたようです。「快楽の園」という名称は十二世紀にアルザス地方の聖オディール女子大修道院長であったヘラーデ・ドゥ・ランズベルグが用いたものだとか。

人間らしきものを含めて数えると500人以上になる。そして誰もがアンニュイでメランコリックな表情をしている・・(中略)・・・一見にぎやかそうに見えるこの画は、誰も喜んではいない、本当にこれは「快楽の園」か?
あきらかに適当なまとめ :: 激痛に耐える|yaplog!(ヤプログ!)byGMO




楽園を表現しているのではなく、世界の終わりを警鐘している?!


リンゴ・イチゴ・サクランボ・スグリ・ブドウ・ザクロなどの果実が描かれている・・(中略)・・この画の中央右上で果実を収穫するグループがあるが、「果実を採る」「花を摘む」ということは性行為の婉曲表現である。
あきらかに適当なまとめ :: 激痛に耐える|yaplog!(ヤプログ!)byGMO

果物はとてもとても美味しいが、ちょっとしたことで傷んでしまうという点からも「快楽」を表現しているようです。


世界の終わりを表現しているのは絵だけではない



果実はギリシャ語で[karpos]、肉体はラテン語で[corpus]。
あきらかに適当なまとめ :: 激痛に耐える|yaplog!(ヤプログ!)byGMO

これは語呂合わせで、果物を肉欲としても解釈できそうです。


この果実の収穫の下にはリンゴを持って踊る手足がある。リンゴ[melon]と手足[melos]語呂合わせである。
さらにリンゴの器に乗る男は巨大な「桑の実」を操っている。アウグスティヌスは、リンゴを「死をもたらす果実」と記述したが桑の実[merum]もまた死[meros]との語呂合わせである。

あきらかに適当なまとめ :: 激痛に耐える|yaplog!(ヤプログ!)byGMO




絵の中の物で語呂合わせによる表現もあったわけですね。


ナイフを乗せた耳の車の「ナイフ」に小さく書き込まれているラテン語「M」の文字も世界の終わりを表している?!




The ears with the knife sticking through them symbolizes how the material world has made us deaf to the word of God. If you zoom in you can see the letter M etched unto the knife. It represents mundus, the latin word for "world."
Garden of Earthly Delights lecture notes flashcards | Quizlet

神の言葉に耳を傾けない(神の教えを守らなかった)人は地獄へ堕ちることを表現していて、ナイフに刻まれた文字はラテン語で「M」、「世界」という意味になる。・・・・と意訳ですが書いてあると思います。


ヒエロニムス・ボスが三連祭壇画「快楽の園」で伝えたかったこととは?


中央パネルに描かれた複雑な象徴的意味が何を表しているのかが何世紀にもわたって学術論争の的になってきた。20世紀の美術史家の間では、祭壇画の中央パネルには道徳的な警告が描かれていると解釈する研究者と、失楽園が描かれていると解釈する研究者との二派に大きく分かれている
快楽の園 - Wikipedia



神によって創造された天地、そして地上の楽園が、人間が犯す“快楽”の罪によって、地獄の世界になってしまうことを、警告している
ヒエロニムス・ボスの「快楽の園」 | ムッシューPの美の探究

個人的には上の解釈がしっくりきますが、答えは画家本人のみぞ知るなのですね。


すっごい余談ですが・・・


こんなものが売られていました。



【絵を読む】完璧な観察眼を持った史上最初の芸術家による「アルノルフィニ夫妻の肖像 」の絵画の謎解き《暗号》



作者と絵画について


初期フランドル派の画家ヤン・ファン・エイクが1434年に描いた絵画。油彩による濡れている絵具層のうえから新たな絵具を乗せて混ぜ合わせる技法(写実手法)や錯視的技法による新技法の確立者。後にこの新技法をレオナルド・ダ・ヴィンチは「モナ・リザ」に使用している。


さて、ここから(以下)は絵画「アルノルフィニ夫妻の肖像 」の謎《暗号》についてご紹介したい。

夏の季節を描いているのに、新郎新婦は厚手の衣装




描かれている部屋は二階以上の部屋で、窓の外に見える桜が果実をつけていることから季節は夏と考えられる
アルノルフィーニ夫妻像 - Wikipedia

季節は夏であるにも関わらず男性はタバード(袖なし、あるいは袖の短いショートコート (en:Tabard))姿、女性は厚いドレス姿で、しかも毛皮で縁飾りが施されている。
アルノルフィーニ夫妻像 - Wikipedia


毛皮や縁飾りが施されたドレス、シルク織りの模様など非常に高価な衣装のようです。
服装は何故かこの季節には不相応な厚手の毛皮ですが、帽子は黒く着色された麦わら帽子なのだそう。謎です。


一本だけ灯っているロウソク




シャンデリアをよーくみてください。一本だけロウソクが立っており、火が灯っています。ロウソクは信義の象徴なのだそう。

天井の銅製のシャンデリアには、一本の蝋燭しか灯されていません。これは神の目を表していて、神聖なる結婚が行われていることをあらわしているそうです。
ルネサンス | ムッシューPの美の探究

もしロウソクが、新婦側に立てられていたら懐胎を告げる表しなのだそう。
新郎側だけに立っている理由としては別(亡き先妻との記念肖像画)の説もあるようです。
ロウソクは生者の上に立っており死者の上には立たない。後で説明している凸面鏡のフレームの浮彫と合わせて考えると夫は生者、妻は死者という解釈もうなづけるような気がします。


窓枠と机の上にポツンと置かれているオレンジ(果物)




旧約聖書の詩篇中に「高潔な人とは葉を落とさない樹木のよう」とうたわれたことからオレンジの木は天国の象徴であり「知識」を表すのだそう。
ということはオレンジは知識の実なんですね。
知恵の実 = アダムとイヴが犯した原罪から解放した物(リンゴ)と同等の意味をもつのでこれから生まれてくる予定の子供に救世主という期待をも込めているのかもしれません。


当時、極東の物品はちょっとしたブームだったようで、こうして中国原産の果物を描くのはインテリのあかし
オレンジの話 : ルネサンスのセレブたち

オレンジは当時のブルゴーニュでは非常に高価な果物であり、アルノルフィーニが取り扱っていた商品の一つだったのかもしれない
アルノルフィーニ夫妻像 - Wikipedia

ということで、裕福であった(富)も表しているんですね。
また、イタリアではオレンジは豊穣や多産を表すんだとか。


無造作に置かれた女性物の靴と先端が尖った男性靴






1430年、ジャンヌ・ダルクを捕らえたブルゴーニュ公国のファッションリーダー的存在のフィリップ善良公が流行らせたと言われる木靴が左下に見えます。
先が尖っている木靴で宮廷で流行ったんだとか。
また、よーくみると新郎新婦が手を合わせている点から下に下がってみると女性物の靴も発見できます。
お互いに履物を脱いでいる光景は神聖な儀式をしている証なんですね。


鏡に映っている、描かれていない人物




絵の真ん中、夫妻の間に凸面鏡があります。その鏡には、よく見ると夫妻の後姿の向こうに、こちらを向いた二人の人物、青い服の男と赤い服の男が、見えます。ひとりはこの絵を描いてる画家自身、もうひとりは結婚の立会人といわれています。
ルネサンス | ムッシューPの美の探究

凸面鏡にはアルノルフィーニ夫妻像と対峙して、ドアのすぐ近くにいる二人の男性が映し出されている。手前の赤い服の男性はファン・エイク自身(画家)だと考えられている
アルノルフィーニ夫妻像 - Wikipedia

凸面鏡に正面に映る2人の人物は画面に描かれておらず、我々(絵を見ている)側にいることになります。
不思議と同じ空間にいるような印象を受けますね。



当時の結婚は、神父の立会いを必要とせず、二人の成人の立会いだけで成立するので、画家を含む二人が、立会人になっていると考えられます。さらに凸面鏡に上には“ヤン・ファン・エイクここにありき 1434年”とラテン語の記銘があります。これは、画家のサインというより、結婚の立会人としての署名とみられます。
ルネサンス | ムッシューPの美の探究

画家のサインを画中の壁に書いたように表現しているのもなんとも新鮮。そもそもこの時代の画家で作品にサインを描く方はいなかったそうです。先駆者なんですね。

但し、この作品他の作品とサインの内容が若干異なっているようです、常に「これを描く」という表記なのに対して、アルノルフィーニ夫妻の絵は「ここにありき」と描かれているようです。ですので、これはサイン以上の意味(結婚の立会いを証明するサイン)として解釈する方が多いようです。


妊娠しているようでしていない新婦




新婦の衣裳が、まるで妊婦のように、腹部が膨らんでいて、妊娠(あるいは妊娠祈願)を表しているという説もありますが、当時流行のファッション衣服という説もあります。
ルネサンス | ムッシューPの美の探究


当時のヨーロッパでは、妊婦のような体形が究極の女性美を表すと考えられていたため、女性たちは腹のまわりに詰め物をして美しさを競っていたのです
雑話225「謎だらけ『アルノルフィニ夫妻の肖像』」|絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

安産祈願や妊娠祈願、すでに妊娠をしている説もある。左記の安産祈願や妊娠祈願説の理由としては、ほうきが掛けてあるベッドの支柱の頭部にある聖マルガリータの木彫。合唱する女性に竜が彫られていて安産の守護聖女とされているとのこと。ただ当時の時代背景からすると夫婦の妊娠への願いなのかもしれません。


女性の聖人を描いた絵画には非常に多く見られる装束で、当時女性の間で流行していた着こなしだったと指摘している。ルノルフィーニは布地の商人だったこともあり、衣服の流行を重要視していたと考えられている。
アルノルフィーニ夫妻像 - Wikipedia

ファッション説が濃厚なような気がしますね。


意味深な凸面鏡のフレームに描かれた10つのシーン




先のロウソクの解釈で生者と死者の記念肖像画説なんてものもあるよーと書きましたが、10つのシーンはどれもキリストの受難の場面が描かれています。
これだけだったら、ほうき(聖水をまく刷毛)や数珠(信仰の象徴ロザリオ)もありますし、キリスト教を重んじる夫婦なんて解釈でもいいかもしれませんが、
実は左側(夫側)には生前のシーンを、右側(妻側)には死後のシーンが描かれているんです。


不自然に握られた手




重ねられた夫妻の手が何を意味しているのかも、研究者の間で議論となっており、この手こそが作品の主題であると指摘している研究者も多い
アルノルフィーニ夫妻像 - Wikipedia


新郎は左手で、新婦の右手の掌を、こちらに向けて握っています。新婦の掌をこちらに向けて、手をつなぐのは、明らかに結婚の契約を表すという説が、定着しているそうです。
ルネサンス | ムッシューPの美の探究


新郎の左腕が右腕に比べて短くなっていることから不自然に見えるんですね。

通常は握手するように右手で右手をとるのですが、ここでは男性の左手で女性の右手をとっています。これは、身分か家柄が違う結婚を示しているのです。
雑話225「謎だらけ『アルノルフィニ夫妻の肖像』」|絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

他には男性の左手で女性の右手をとっている表現は、結婚ではなく婚約の誓いを表しているという説もあります。既に指輪の交換という儀式も普及していたし、結婚の誓いも教会でやらないのはちょっとおかしいという説ですね。たしかにうなづけます。


可愛い犬




犬は、忠実、誠実の象徴として知られています。また地上の愛も表すそうです。
ルネサンス | ムッシューPの美の探究

犬が夫婦の中央にいることから、女性が夫以外の男性に身や心を許さないこと(貞節)も表現されてるんですね。



疲れました。描かれている一つ一つに意味があるとても興味深い絵です。
私の中途半端な頷きは省いて様々な説がある「アルノルフィニ夫妻の肖像」は観てもよし!読んでもよしですね。


【番外編】名画のミステリー♪美術に疎くても興味をそそられてしまう名画の謎2



名画のミステリー♪美術に疎くても興味をそそられてしまう名画の謎。其の二です。番外編記事です。
名画の謎調べてきました。ご紹介。

印象派の父、マネが描いた傑作「オランピア」がフランス社会を震撼させた理由とは?




絵画史上最もスキャンダラスといわれ、この一枚がなければ、印象派もキュビズムも存在しなかったといえるほど、革新的な一枚

美の巨人たち エドゥアール・マネ『オランピア』: 週間番組表 : 番組情報 : テレビ東京


『ウルビーノのヴィーナス』は後世の画家であるエドゥアール・マネに影響を与え、『オランピア (Olympia, 1863年 オルセー美術館蔵)』ではヴィーナスが売春婦に置き換えられて描かれている。

ウルビーノのヴィーナス - Wikipedia

『ウルビーノのヴィーナス』は、豪奢なルネッサンス風宮殿を背景に、長椅子かベッドに寄りかかる若い女性の絵画で、ローマ神話のヴィーナスを描いた作品。
イタリアの巨匠ティツィアーノが1538年に描いたものです。


『オランピア』という名が当時の娼婦の通称であったこと、花束を持った黒人の女性が裸体の女性の召使として描かれていること、当作品でベッドに横たわっている裸体の女性はサンダルと首に巻いたひもを身につけているが、このような表現は当時主流のアカデミック絵画において考えられていた神話や歴史上の出来事を描いた絵画に登場する裸体の女性とは異なっており、裸体の女性が当時の娼婦を表している事。

オランピア (絵画) - Wikipedia


また、ウルビーノのヴィーナスでは犬だったものが、『黒猫』になっている。ナポレオン3世の時代は空前の売春時代であり、黒猫は「女性器」という意味もとれる。


主題がそもそも批判をあびるようなものだったんです。タブーを犯したんですね。


画法においても革新的でした。

マネは日本の浮世絵の影響によって、ルネッサンス以来の奥行きのある空間表現や立体感をつけるための陰影を切り捨てた。
オランピア (絵画) - Wikipedia

前述の「ウルビーノのヴィーナス」を見ても分かりますが、従来は画面の左斜め上から光が差し込むように描きます。しかし、「オランピア」は、正面から光を当てたように描かれています。

正面からの光は、暗い背景とのコントラストを強め、娼婦だけを浮かび上がらせています。
マネは、オランピアを画面の中で際立たせ、人々が見入ってしまうようにしむけたのです。

エドゥアール・マネ作「オランピア」(「美の巨人たち」より)|つむじかぜのブログ


フェルメール 「天秤を持つ女(真珠を量る女)」は何も量っていなかった?!




この女性は金貨や真珠を量っているものと考えられていたが、近年の顕微鏡調査によって、天秤には何も乗せられてないことが判明しており、その解釈については諸説唱えられている。
ヨハネス・フェルメール-真珠を量る女-(画像・壁紙)

『マタイによる福音書』13:45-46 の「高価な真珠のたとえ話」から、自身とキリストの振る舞いを比べようとしているという説もある
天秤を持つ女 - Wikipedia

注目して欲しいのは、女性の後ろにある絵(画中画)である。これは『最後の審判』の絵である。キリストが量るのは、人間の魂である。女性が量っているのは現実であろうか。
フェルメール 「真珠を量る女」 画像と解説


この女性は「胎児の魂を量る象徴」であり、聖母マリアを意味すると主張する美術史家もいる
天秤を持つ女 - Wikipedia


画中画や女性は、フェルメールの妻カタリーナをモデルとしたとされています。
彼女の仕草から、この頃の作品には珍しく寓意的なアプローチが示されているのが大きな特徴であり、上記のように研究者の中でも解釈が異なるようですね。


天秤を持つ少女の絵を拡大して観たい方はこちら(Googleアートプロジェクト)
https://www.google.com/culturalinstitute/asset-viewer/woman-holding-a-balance/-wHFDKu7-mhjtQ?projectId=art-project



教養人でも未だ寓意の解釈が困難!?いくつもの謎があり、知的好奇心くすぐる作品




多くの謎にあふれる艶やかな名画、「愛の勝利の寓意」。アーニョロ・ブロンズィーノの有名な傑作から。


愛と美の女神≪ヴィーナス≫であるが、複雑に配される人物の解釈によってその内容が異なるミステリアスな作品である。

ブロンズィーノ-愛の勝利の寓意(愛のアレゴリー)-(画像・壁紙)


「快楽」の寓意とされる薔薇を持った男児、「欺瞞」の寓意とされる少女(実は蛇女。ちょっと怖い。。。)「嫉妬」の寓意とされる老女といろいろな寓意をこめているので、解釈をめぐっていろいろ論争がされている作品でもあります。

だまけん文化センター ブロンズィーノ  愛の勝利の寓意(愛のアレゴリー)

身勝手な自己変換)すると。。。
鳩:恋の愛撫。
赤い枕:怠惰&好色。
林檎:禁じられた愛。
仮面:不誠実&偽り。
右の手に薔薇を持った男児:はかない快楽。愚行。
美少女:下半身がスフィンクス。蜂巣を差し出し、蠍を用意。右手が左手で、左手が右手。人を誑かす欺瞞の象徴。
砂時計の翼持つ老人:時の翁。
無表情な女性:真理&忘却&欺瞞、諸説プンプン。老人と共に青いヴェールを剥ぎ取り、秘められた愛欲を晒す。
老婆:秘められ隠されてた愛欲を見て頭を抱え絶句する嫉妬。


寓意の解釈 ( 絵画 ) - ♂!♀? - Yahoo!ブログ


「この絵の中のいちばん重要な人物は「時」の老人であってね、この老人がヴェールを剥いで「愛」というものの種々相をあらわにしているというわけさ。

徒然に知的な謎解きマニエリスムの画家『ブロンズィーノ』: 賢者の石ころ

【番外編】名画の秘密ってミステリアス♪美術に疎くても興味をそそられてしまう名画の謎



名画の秘密ってミステリアス♪美術に疎くても興味をそそられてしまう名画の謎、其の一です。このブログでは番外編の記事になります。
時代背景、画家の生涯、寓意それぞれ美術に疎くても知って損はない、知っていくとさらに絵に興味が湧いてきて覚えやすいですね。


【番外編】あなたは知ってた?!展示物2500点以上!イタリア国内最大級のウフィツィ美術館のアレコレ話



ウフィツィ美術館の秘密!なんて記事を書きたかったんですが、そんな事を調べられる程このみちに長けておりませんでしたw
いやぁウフィツィ美術館について知らなかった事がたくさんです。ウフィツィという名前の意味や観覧について。家に居ながらも行った気にさせてくれる素敵なものや行く予定の方にとっても為になるサイトの紹介などなど紹介させていただきます。



「図説 イタリア・ルネサンス美術史」が気になっている


これを読んでウフィツィ美術館に行ってみたいですなぁ。

『6つのキーワードで読み解く西洋絵画の謎』が気になっている


絵の「謎解き」がすらすらできる新しい美術入門書とのこと。

一枚の絵に秘められた物語と事件、伝統と革新のせめぎあい。日本人が苦手な神話画、宗教画の“約束事”まで、西洋美術史界の碩学が、6つの柱で「見方の要点」を明快に解き明かす。短時間で絵の謎解きが堪能できる新しい美術ガイド。

『印象派はこうして世界を征服した』が気になっている

印象派はこうして世界を征服した
Posted at 2015.2.26
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 絵の値段というわかりやすいバロメーターも含めた<受容の変遷>にふれることで、印象派ファンもアンチ印象派も楽しめる一冊。図版76点掲載。

あとちょっとで手に入れられることが出来る。目の前にあるものが手に入らないとなると、人間心理的に余計に欲しくなってしまうのは絵画に限らずだと思います。印象派絵画が好きなので、手に入れた方々の奮闘記などを知ると名画がこんな扱われ方をしていたなんて・・とショックを受けるのでしょうかね?

『世界の名家と名門』が気になっている

世界の名家と名門 (洋泉社MOOK)
Posted at 2015.2.25
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★巻頭グラビア 世界の名家・名門の美を旅する
ベルヴェデーレ宮殿/シェーンブルン宮殿/ヴェルサイユ宮殿/
サン・ピエトロ大聖堂/インペリアル・イースター・エッグ etc

★Part1 悠久の歴史に燦然と名を刻む 世界を動かした五大名家
七百年の栄華を誇る美の帝国 ハプスブルク家/
革命に散った太陽の王家 ブルボン家/
ルネサンス芸術の花を咲かせた名家 メディチ家/
北の帝国を彩る女帝たち ロマノフ家/列強が恐れたイスラムの巨星 オスマン家

★Part2 世界から崇敬を受ける気品あふれる名家 世界のロイヤルファミリー
つねに注目を集めるロイヤルファミリー イギリス王室/
絢爛たる美術コレクションを誇るスペイン王室/
12世紀からの歴史をもつ名家 リヒテンシュタイン公室/
17世紀に独立した若き国の君主 オランダ王室/
大国の狭間で翻弄された歴史をもつルクセンブルク大公室/
女優グレース・ケリーとの恋物語で知られるモナコ公室/
ドイツの名家をルーツとするベルギー王室/
日本の皇室に次ぎ世界で二番目に古い歴史をもつデンマーク王室/
フィヨルドとオーロラで知られる国の君主ノルウェー王室/
ナポレオンの側近を開祖とするスウェーデン王室/
国民全体から敬愛を集めるアジアの名家タイ王室/
ヒマラヤ山中に息づく小国の君主ブータン王室/
世界に誇るべきロイヤルファミリー日本の皇室

★Part3 世界の政治・経済を動かす一族 世界の華麗なる名門
世界一の富豪と呼ばれる一族ロスチャイルド家/ア
メリカの巨大複合企業の創業家デュポン家/
世界三大財閥の一角を成す名門ロックフェラー家/
アメリカ経済を動かした巨頭モルガン家/
世界的な篤志家として生きた鉄鋼王カーネギー家/
いまなお人気が高い悲劇の一族ケネディ家/
アメリカ三大財閥のひとつとして輝くメロン家/
名車を生んだイタリアの名家アニェッリ家

【特別講座】
名家・名門の家系の源流 はじめてでもわかる!栄枯盛衰の欧州王朝史
上記本書の紹介(目次ですが)はAmazonにはなく、セブンネットショッピングさんから引用しました。 http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1106406012/ メディチ家、ハプスブルグ家知っています。・・・。『知っている』しか言葉が出てきません。 名家と名門、そして著名な画家と名画を関連付けて覚えていきたいです。

『華麗なる英国貴族101の謎』が気になっている

華麗なる英国貴族101の謎
Posted at 2015.2.25
島崎 晋
PHP研究所
売上げランキング: 71366

華麗なる英国貴族と執事、従者、メイド、下僕たちの世界がよくわかる!
貴族の屋敷「カントリー・ハウス」、貴族とジェントルマンの違い、使用人たちの採用基準、毎日の仕事や食事、服装の決まり事、娯楽や休日など、英国貴族をめぐる疑問をわかりやすく解説。貴族や使用人たちの日常生活が手に取るようにわかる一冊。
【本書の主な内容】貴族のなかでも序列があるのか――伯爵は何番目か/貴族の屋敷「カントリー・ハウス」は、どのくらい広かったのか/なぜ執事や従者が必要だったのか/採用はどのように行なわれたのか/侍女と他のメイドとの仕事・ふるまいの違いとは?/夕食にはどんな料理が並んだのか/屋敷にいるときはどんな服装をしていたのか/英国貴族の結婚式はどのように行なわれたのか/外出時のステッキとコウモリ傘は必需品なのか …etc.

ダウントン・アビーが10倍楽しめると帯にあるが、海外ドラマでやっていた(いる?)そうですね。
この海外ドラマに関しては、海外ドラマNAVIさんが魅力を紹介してくれていますよ。

http://dramanavi.net/column/2014/08/post-266.php

『肖像画で読み解くイギリス史 』が気になっている

肖像画で読み解くイギリス史 (PHP新書)
Posted at 2015.2.25
齊藤 貴子
PHP研究所
売上げランキング: 40969
離婚を禁止していたローマ・カトリック教会から離脱し、若い女と再婚したヘンリー8世。その眼には、感情のかけらもない。「陽気な王様」チャールズ2世を惑わした美女、ネル・グウィンとバーバラ・ヴィリアーズ。彼女たちの肖像画は、王を夢中にさせたネルの愛らしさとバーバラの色っぽさを十全に伝える。最初の本格的な英語辞典を生み出したサミュエル・ジョンソンの姿からは、彼の強烈な個性を窺い知ることができる。イギリスは歴史に学ぶことを重要視し、数多くの肖像画を後世に残してきた。肖像画を深く知ることで英国史の本当の面白さが見えてくる。
『イギリス国家の歴史と言うよりは、現代までに残された『肖像画』を巡る歴史、端的には当該『肖像画』に描かれた人物と作者に纏わる『歴史』と観た方が良い。』とAmazonレビューにあります。肖像画の人物はどんな人なのか、当時はどんな事が起きていたのか、どうして肖像画が描かれたのかなどがわかりやすく説明されていればほしいなぁ。

『名画の言い分―数百年の時を超えて、今、解き明かされる「秘められたメッセージ」 』が気になっている

西洋美術史界のエンターテイナー、木村泰司の初の著書!独特の視点と軽妙洒脱な語り口で、ダ・ヴィンチ、ラファエロ、ブリューゲル、ドガ、モネ…の名画を解説。「へえ、そうだったのか」の連続で、美術館巡りが100倍楽しくなります。
『西洋美術を駆動してきた政治や経済、宗教や社会の歴史をきちんと理解してもう一度なじみ深い美術作品を見つめなおしてみようというのが本書の狙い』とレビューにある。こういった絵の背景を学べる本は何冊も持っていたい。そして一度では覚えきれないので、何度も読み返したい。

『裏側からみた美術史』が気になっている

裏側からみた美術史 (日経プレミアシリーズ)
Posted at 2015.2.21
宮下 規久朗
日本経済新聞出版社
売上げランキング: 249457
ル美術史の教科書には載っていない色々なお話をきけるそうです。絵だけでなく美術家や美術作品のエピソードを追ってみたい!

『すぐわかる西洋絵画よみとき66のキーワード』が気になっている

すぐわかる西洋絵画よみとき66のキーワード
Posted at 2015.2.21
千足 伸行
東京美術
売上げランキング: 518634
「絵に描かれた約束事―シンボル(象徴・記号)・アレゴリー(寓意)・アトリビュート(持物や目印)―を簡潔に解説」+「西洋絵画を理解するための代表的なキーワード66と、250以上のサブ・キーワード」いいですね。