Sandro Botticelli [Public domain], via Wikimedia Commons
ルネサンス期のイタリア人画家サンドロ・ボッティチェッリが1482年頃に描いた、フィレンツェのウフィツィ美術館所蔵の絵画。日本ではイタリア語からの訳語である『春』や、『春(プリマヴェーラ)』、『プリマヴェーラ(春)』などとも呼ばれる。
プリマヴェーラ - Wikipedia
サンドロ・ボッティチェリの「春(La Primavera)」(または「春の寓意(Allegoria della Primavera)」)は美術史上最も難解な、謎に満ちた作品のひとつとして知られています。これまで「春」には様々な解釈がなされてきましたが、決定版と言える解釈はまだ存在していません。
ボッティチェリの春 = プリマヴェーラの謎
「春」にしては背景が暗く、ゼピュロスが蒼白で何だか怖い
ゼピュロスが出て来ている部分の樹木の様子や背景にも、なかなかただならぬ不吉な雰囲気が漂っています。・・・(中略)
まるで「墓場=冥界への出入り口」から現われた様子を描かれたように思われます。
ボッティチェリ《春(プリマヴェーラ)》:「死」に関係するふたりの登場人物(上)
画面右上にいる風をおこして、さらにいる西風の神がゼピュロスです。ボッティチェリが描いた「ヴィーナスの誕生」にも実はゼピュロスはいますが、色が違います。あちらは肌色ですが、こちらは青白い。意図的であるように思えますね。
冥界の案内人がいる。
画面左端にいる男性。この神様はその衣装の特徴から、ヘルメスであると言われています。そしてヘルメスは「冥界の案内人(プシュコポンポス)」という役割を持つ神様なのです。
ボッティチェリ《春(プリマヴェーラ)》:「死」に関係するふたりの登場人物(上)
wikiには、マーキュリーとありますが、ギリシア神話においてはヘルメス(オリュンポス十二神の一人)と同一視されます。プシュコポンポスという名は「魂を導く者」を意味する、ヘルメス神の異名です。あらゆる人々に眠りをもたらす、黄金の羊飼いの杖を携えています。絵でいうと雲にその杖を向けていますね。
衣装の特徴といえば、
美術では、つば広帽子をかぶって伝令杖(つえ)を手に、羽根の生えたサンダルを履く軽快な旅人姿で描かれることが多い。
ヘルメス(ヘルメス)とは - コトバンク
実は当時不吉な作品だった?
プリマヴェーラを依頼したジュリアーノ・デ・メディチ(ロレンツォの弟。息子[3男]のほうではない)が、完成直後にパッツィ家の陰謀(当時のフィレンツェの実力者ロレンツォ・デ・メディチを敵対関係にあったパッツィ家の関係者が殺そうとして失敗した事件)により暗殺され、当時この作品は不吉なイメージが付きまとっていたんだとか。(※誰がこの作品を依頼したかどうかは諸説あります。)
ジュリアーノの死とシモネッタの死に関係あり?!
ジュリアーノ・デ・メディチといえばダヴィンチと友人であり「モナ・リザ」を依頼した人物です。ジュリアーノは上で記載したようにパッツィ家の陰謀により25〜26 歳の若さでなくなっていますが、とびきりの愛人がいました。
彼はシモネッタ・ヴェスプッチの愛人であったが、彼女は彼よりも前にわずか22歳で亡くなっていた。
ジュリアーノ・デ・メディチ - Wikipedia
メディチ・サークルのマドンナ的存在で、ボッティチェリの永遠の女性だった。「ヴィナスの誕生」の女神をはじめとして、ボッティチェリの描く女性には、常にシモネッタのイメージが重なる。
LA PRIMAVERA ボッティチェリ「春(プリマヴェーラ)」のキーワード
ヴェスプッチ家を通してボッティチェッリに見いだされ、彼女を描くために多くの画家たちがフィレンツェにやってきた。
シモネッタ・ヴェスプッチ - Wikipedia
肺結核により、この世を去ったシモネッタですが、とっても美人だったようですね。ブロンドの髪、そして整った面長の顔、均整の取れた姿態、シモネッタはフィレンツェの人々からLa Bella(美しき)と呼ばれていたそうです。ちなみにジュリアーノもイケメンでイル・ベッロ(美しき者)と言われていたようです。美男美女。
二人の恋を祝福した詩に影響を受けている?!
「春」は、・・・(中略)・・詩人ポリツィアーノの詩「ラ・ジョストラ」から画想を得たものだと言われています。「ラ・ジョストラ」は、1475年、騎芸競技会(ジョストラ)で優勝したロレンツォの末弟・ジュリアーノの武勇と美しいシモネッタの恋を祝福した作品で、ボッティチェリはこの詩の世界に相当心惹かれていたようです。
mariのページ – 世界の名画をコメント付きで紹介するページです。 美術, 絵画, 画家 » Blog Archive » 「春」
この詩に影響を受けたことは十分考えられる。いや確実に影響を受けている。この詩には、メルクリウス以外、ゼピュロス、フローラ、プリマヴェーラ、アモル(クピド)、ヴィーナス、グラティアが登場する。特に、68節では、ヴィーナスの領地の説明として、まず、そこへ向かうアモル(クピド)の姿を描いて、その領地をグラティア、美の女神、フローラ、ゼピュロスがいるところとしている。
『馬上槍試合』の影響: takayanの雑記帳
当時この絵は「春」ではなく詩より「ヴィーナスの王国」と呼ばれていたそうです。実際に詩人ポリツィアーノが書いた詩「ヴィーナスの王国」から着想して描かれたという説は最も有力だそうな。
やはり2人の死は作品に影響があったのでしょうか。
やはり絵の中に二人がモデルになっている神が存在する
これまで「春」のヘルメスには、「雲を払っている」とか、「三美神の1人と恋に落ちる」とか、様々な解釈がありましたが、み~んな見当違いです。
彼は亡くなったシモネッタの魂を導くために、この絵に呼ばれたのです。
ヘルメスと宝杖(カドケウス) - プリマヴェーラの謎
ヘルメスは亡くなったシモネッタの魂の案内役だったんですね。灰色の雲(暗雲)を追い払い、春の園の平和を守ろうとしている説が通説となっていますが、私も表情や姿勢からみても、無礼なことを申しますが、平和を守るためのお仕事をされているとは思えません。
花のフィレンツェの二つの悲劇を悼んで、ロレンツォが夭折の佳人二人の姿を写させたのが、
『プリマヴェーラ~春~』だという説があるのです。ジュリアーノはメルクリウス、シモネッタは花の女神フローラとして。
www.libresen.com/rosehp/day/day-prima/primabera3.htm
制作年がジュリアーノが亡くなった年以降であれば、たしかに兄ロレンツォ(もしくはボッディチェリ自身)が思いを込めて描いたのかもしれないですね。
フローラの表情、ヘルメスの表情はたしかに他の神よりも引用元のサイト様に記載されているとおり、人間味があるように感じますし、よく見ると肖像画と似ている感じもします。
死から生へ、地上から天上へ
画面の両端にいる男性二人は、ともに死の要素に関係していて、
その二人に挟まれたヴィーナスの園は、オレンジや花々の息吹に満ち溢れた生命の世界です。
www.libresen.com/rosehp/day/day-prima/primabera3.htm
右端が青白い色をしたゼピュロス。左端がヘルメスですね。
上でも記載しましたが、天界と地上と、そして、冥界との間を行き来する伝令神としてヘルメス。青白いゼピュロスは冬から春を届けています。
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